【キャラクターしょうかい】
ハルカ:明るい性格の中1女子。SNSで百物語をやろうと呼びかけた。
ナツキ:ハルカの彼氏で幼なじみ。頭がよくて落ち着いた性格。
アキラ:ハルカとナツキの幼なじみ。よく考えずにしゃべったり行動したりするところがある。
ミフユ:中学でハルカと仲良くなった女子。読書と怖い話が好き。
あたしが宣言したとおりの時間に、みんなは中央公園に集まった。
みんなと会うのは久しぶりだけど、ちょっと見ない間にアキラだけ、げっそりやつれてる。いろいろあったからしかたないよね。
うなだれて丸太のベンチに座りこんだアキラを、あたしたち三人は立ったまま見下ろした。
百物語をはじめてからいろいろあったから、こたえてるのかな。
「おれのせいで集まってもらって、悪い」
そんな、今までだったら言わないようなことも言っちゃって。
「あのさ、もうこの百物語ってやつ、やめねえか?」
アキラはおずおずと切り出した。
「やっぱりおれ、誰かに呪われてるような気がするんだ。そう感じるようになったの、この百物語を始めてからだし……」
「ねえ、アキラくん。本当に呪われるような心当たりないの?」
ミフユちゃんが優しくたずねる。
「もう一度、よく考えてみろよ、アキラ」
ナツキにまでたたみかけられて、アキラは不安そうに顔を上げた。 だけど、
「おれ、別にうらまれるようなことなんてしてねえもん」
アキラがそう言ったのを聞いた瞬間、あたしはこれまでずっと心の中に閉じこめていたものが、爆発した。
「あんたなんか、呪われて当然なのよ!」
「……ハルカ?」
信じられないものを見たみたいに、アキラが見上げる。
「あたしたちがあれだけヒントを出したのに思い出さないなんて、サイテー」
「は? どういうことだよ」
「あたしたち、小学生の頃はここでよく遊んだよね。あたしの弟もいっしょに……」
「ハルカの弟? ……あっ」
「やっと気づいた?」
あたしはゆがんだ笑みを口元にうかべた。
「あんたがふざけて背中を強く押したから転んで、あたしの弟は大けがをした。まだ前みたいに走ったりできないの、あんたも知ってるでしょ」
「だ、だって、あれはわざとじゃなくて、ふざけてたから――」
「わざとじゃなかったら、何してもゆるされるの? おかげで弟は何度も手術して、つらいリハビリをするはめになった。どんなに痛くてもがんばってる弟に、あたしは何にもしてやれない。あのとき、あたしもいっしょにいたのに」
声がふるえてくる。 あたしを励ますように、ナツキとミフユが左右から手をつないでくれた。それを見て、アキラがハッとしたように目を見開いた。
やっとわかったみたいね。
「あたしはずっと、アキラのことをうらんでた。だから二人に協力してもらって、この百物語を企画したの。あんたに自分がやったことを思い知らせるためにね。ミフユはあんたにいじられて嫌な思いをしていたし、ナツキはあたしのカレシなんだからあたしの味方だもん」
「そ、そんな……」
冷たい表情で告げるあたしを見上げるアキラの顔は、見たこともないくらいに真っ青。
「全部、おまえらのしわざだったっていうのかよ」
「そうよ。わざとアキラをスクエアゲームの四人目にして、呪いをかけるのが目的だったの。いきなりやってみようって言ったらやらなかったかもしれないけど、毎日みんなで怖い話をしてたら慣れちゃって、しょうがないからやるかってなったでしょ?」
アキラの顔はますます青くなる。 そこに、追いうちをかけるようにナツキが言った。
「昨日、アキラには教えなかったことがあるんだ」
「……は?」
「こないだ紹介したネットの相談室があるだろ? あそこに9644から電話がかかってきた人からの相談もあったんだよ」
ナツキはスマホの画面をアキラに見せた。
「はあ? 何だよ、これ」 アキラが叫んで立ち上がったときだった。
ブブブブブブ。
アキラのポケットの中でスマホがふるえる音がする。 真っ青な顔でアキラが取り出したスマホの画面では、通話アプリが「9644」から着信があったことを知らせていた。
ブブブブブブ。
スマホはふるえ続ける。誰もが息を飲んで、画面を見つめていた。
着信があったときは「拒否」「応答」とアプリが表示するのが普通なのに、そこに表示されていた選択肢は
「反省する」
「反省しない」
の二択だったから。
どちらかをえらびタップして、結末を見よ・・・!