スマホを握りしめて、アキラは叫んだ。
「どいつもこいつも好き勝手言いやがって。おれだけが悪いんじゃねえ! ハルカの弟だってふざけてたじゃん。ちょっと押されたくらいで転んだやつが弱えんだから、自業自得だろ」
「ひどい……」
あたしはくちびるをかんだ。泣きそうだ。
「アキラくん、そんな言い方ってないよ」
「そうだよ。ハルカに謝れ」
ナツキとミフユがあたしをかばってくれる。
その様子に、アキラは顔をゆがめて笑う。
「9644とか、誰かのイタズラに決まってんだろ。
こんなん本気で信じるやつなんていねえよバーカ!!」
アキラは高らかに叫ぶと、「反省しない」ボタンをタップした。
「アキラくん、まだ見つからないんだって?」
「去年からずっと行方不明らしいよ」
クラスの子たちが、ひそひそと話すのが聞こえる。
一年前のあの日、スマホをタップしたアキラはあたしたちの前から消えた。今、アキラがどこにいて、どうなっているのか、誰も知らない。
ただわかっていることは、「9644」という番号から着信があったら、選択を間違えていはいけないということ。
生徒がみんな帰宅してしまった後の学校。
誰もいない理科室に、一体の人体模型がぽつんとたたずんでいる。
「助けて……! 誰か、気づいてくれえ……」
模型の中から響くかすかな叫びが、届くことはない。