※敬称略、順不同

『うちのクロノスが鳴くことには』えまりゆう

入賞まであと一歩でした。少し不思議とサスペンスのバランスが上手い印象。猫のクロノスがキーとなる設定の割には影がかなり薄く、もっとクロノスと主人公の掛け合いを増やして活躍する様子を読ませて欲しかったです。中盤以降の展開には賛否両論ありましたが、工夫次第では面白くなる可能性を秘めていると感じています。

『名は体を表す名取さん』弓葉あずさ

入賞まであと一歩でした。飄々とした語り口ながら、優しさと剽軽さを併せ持つ主人公に好感を抱きました。コンプレックス（あだ名）を取り除くというテーマは読者の興味をひきそうですが、この主人公ならば、もう少しスケールの大きなお話を読んでみたいかも。構成はまだ練る余地がありそうな印象です。

『御園生くんの言うとおり！』水沢玲衣

文章のテンポは良く、読みやすかったです。式神のキャラクターも魅力的で好感が持てました。事件の解決法や、物語全体はもう一歩オリジナリティが欲しかったところ。もっとホラーやアクションに寄ってみてもよかったのでは？　また、陰陽師は知らない読者も多いと思うので、もう少し丁寧に世界観に引き込む工夫も必要かもしれません。

『ぼくの未来は料理人？』武田怜門

「歴史上の偉人と出会い、彼らの過去を知り、彼らのために料理を作る」というフォーマットがとても明確で冒険的で、わくわくしながら読みました。男の子が主人公ですが、性別問わず楽しめるストーリーになる可能性が高いと感じました。ただ、主人公と料理の関わり方にブレが見られたり、時代考証など細かい箇所には課題が残るため、そのあたりを検討する必要がありそうです。

『タイム×ループ　真っ白なスカートをはいたら』風花ユク

タイムループとジェンダーを取り入れた意欲作で、ストーリーのテンポもよく、最後まで引きつけられました。ループのきっかけ設定とヒントのちりばめ方をもう少し練ると、より多くの読者が楽しめると感じました。引き出しが多そうな方なので、シリーズ化を目指せるほかのテーマの作品も読んでみたいです。

『パルフェちゃんは人間になりたい！　＃ふたりのヒミツは甘すぎる⁉』星海ぴこ

キャッチーなトピックを盛り込むのはよかったですが、それらを整理してしっかりストーリーの中に生かせるとよいと思いました。

『リアル謎解きゲーム』佐織えり

ストーリーや描写に安定感がありました。登場人物が謎解きに挑むつよい動機や、斬新な展開があると、もっと多くの人が引き込まれるのではと思いました。

『まんぷく！～魔王城でご賞味あれ～』わき　あんず

お料理の描写が光っていました。ハードな初期設定や、各パートでのハードルが曖昧になっていくので、各局面でピンチを演出してストーリーラインの盛り上がりを意識してほしいです。

『We are BLACK!!!』猫侍

黒人の文化背景を取り入れたダンスの物語で、チャレンジ精神を感じました。重いシーンが多い印象なので、キャラクターたちの明るいやりとりなどももっと読みたかったです。

『放課後ウィッチクラフト』彩白ゆきほ

手品のタネやカードゲームでのイカサマを見破るシーンにグッと引き込まれました。ややＹＡっぽいので、雰囲気とキャラクターをもう少し低年齢向けに軽くしてみては。

『ヒビキはノンストップ！』浦安えみ

設定がキャッチーでよかったです。主人公が夢の実現をためらう理由をはっきりさせ、それを乗り越えることで成長していく爽快なドラマがほしかったです。

『テレパスな私とカガクな彼』うみのあきら

「恋に恋するテレパスの女の子×科学オタクイケメン」の組み合わせは色々できそうでワクワクしました。しかし、色んな展開が考えられる分、すべてを詰め込んでしまった印象でした。

『オカルト喫茶ＭＯＫＡ～わたしがマスター⁉～』北白川りん

設定の大枠や、キャラクターの会話がチャーミングでした。ただ、子どもが夢中になれそうな要素を取捨選択して、ストーリーの軸を絞るとよいと思います。