厳正なる選考の結果、以下の二作品が受賞作に選ばれました。
大賞『ロボ☆友』
星乃ぬう(ほしの・ぬう)26歳 東京都在住
【受賞コメント】
受賞作には私が大好きなものを詰め込んでいます。可愛いロボット、がんばる女の子、優しい友情、あたたかい大人達。
特にちょこらというロボットは、十年も前に考えたキャラです。本物のロボットは造れないから、頭の中で”製造”したちょこらが、文字という部品で組み立てられ、イラストという外装を頂いて世の中に飛び出していくなんて、本当に夢のようです。
キラキラした作品に仕上げられるように頑張ります。
【あらすじ】
カノンはロボットが大好きな小6の女の子。町が主催するロボットコンテストに念願の出場を果たす。が、結果はさんざん。自分が作った、小さくてころころと可愛いロボット“ちょこら”にも、「カノンちゃんがそーゆー風に作ってないから、無理ロボ」とダメ出しされる始末。そこに、ロボット開発大企業の社長令嬢、麗(うらら)があらわれ、「ちょこらは特別なものを持っている」と言われるが……!?
優秀賞『エレガントなかくれんぼ』
近江屋一朗(おうみや・いちろう)30歳 埼玉県在住
【受賞コメント】
うれしいです。まず、自分の作品を面白いと思ってくれた方がいるということがうれしいですし、今後、多くの子ども達に作品を楽しんでもらえる可能性がある、ということもうれしいです。今回受賞した作品は、意見を下さったたくさんの大人たちや、一緒に遊んだり、絵を描いたり、本の感想を言い合ったりしたたくさんの子どもたちのおかげで書けました。本当に、どうもありがとうございました。これからも書き続けて、日本一の児童小説作家をめざして頑張ろうと思います。
【あらすじ】
がさつで食いしんぼうでちょっと乱暴な六年生の少女、観頃凛(かんころ・りん)は大和撫子にあこがれて茶道の教室に入門しようとする。しかし凛は間違えてかくれんぼの家元に行ってしまい、そこで所作が美しい少年、雪花透明(ゆきはな・とうめい)に出会う。執拗にかくれんぼを強要する透明。凛は透明を殴って気絶させ、逃げ出すが……!?
6月吉日、都内の会場にて選考会が行われました。
三次選考を通過した5作品についての2時間に及ぶ議論の末、大賞1作、優秀賞1作、計2作の受賞が決定いたしました。
以下、先生方にいただいた選評です。(50音順)
あさのあつこ先生
『欠点を三歩踏み込めば、かけがいのない魅力に』
今回は、第一回目のみらい文庫大賞ということで、わたしには珍しくあれこれ悩みながら、選考会に臨みました。けれど、その悩みの底には妙に浮き立つ思いもまた、潜んでいたのです。
はっきり言えば、そして、不遜の謗りを覚悟して言えば、最終候補作五編は、どれも未熟でした。その意気は買うものの言葉足らずな作、作者の意欲だけが先走って読み手をとおざけているもの、完成度はたかいけれどまとまりすぎたもの……それぞれがかなりの欠点を抱えているが故の未熟です。でも、その欠点は一歩踏み込めば、いや、二歩も三歩も踏み込めば、作品のかけがえのない魅力ともなる瑕のように感じました。
この欠点、この瑕から出発すれば、書き手と言う名に相応しい、若々しいエネルギーに満ちた一作ができあがるのではと、心が浮き立ったのです。そういう意味で、悩み多い、でも楽しい選考会でした。
大賞の『ロボ☆友』は、SF的な世界にオーソドックスな少女の冒険と葛藤と友情が織り込まれ、実に読ませます。本当におもしろかったです。ストーリーの躍動感、展開のスピードは並みではありません。ただ、ただ感嘆しました。ただ、肝心の二人の少女が類型に過ぎます。だから、二人の友情も類型としか読めませんでした。星野さん、カノンと麗、あなたの生み出した少女たちにじっくり付き合ってみてください。『エレガントなかくれんぼ』は発想と登場人物の個性に酔いました。そこから先が勝負です。『さんかくのさくらんぼ』の完成度は頭抜けていたと思います。筆力に圧倒されながら読みました。この完成度、この纏まりをどう破って行くのか、安田さんの課題と大いなる可能性を感じました。『子どもが先生を救う時代—』と『三十六光年のリリ』は、魅力の原石でしょう。これからどう磨いていくかで、珠にも石にもなる気がします。
石崎洋司先生
『児童文庫とは児童が読みたがる本のことです』
児童文庫は、いわゆるライトノベルとも、従前の児童文学とも異なる特別な分野です。
ハイティーン以上を読者層とするライトノベルでは、作者の感性が多少強く出すぎても、「この世界、わからない人がいてもいい」という態度もある程度は許されるのかもしれません。でも、児童文庫ではだめです。情景もキャラも心理も、すべての児童が理解できるレベルの言葉できちんと説明し、目の前に映像が広がるように描きます。つまり現代文学からしたら「ダサくて」「超コンサバ」な書き方が基本。その上で軽さとスピード感に満ち、同時代性があるけど、つきぬけた、起承転結のある強い物語にする。お手本はディケンズやデュマ、って、古いですかね(笑)。とにかく児童文庫を書くには、まず「駄菓子屋のおじさん・おばさん」になること。「クリエイター」になるのはそれからです。『三十六光年のリリ』はSF、『軽井沢誘拐事件』はコメディとまったく異なる内容ながら、作者が語ってばかりで「子ども読者と対話しよう」という意識が感じられない点が共通していました。大賞、優秀賞受賞作も、出版にあたってはそこを直せるかがカギです。
また、児童文庫では「ユーザー」も児童であることを忘れないでください。従前の児童文学は大人が買い与えますが、児童文庫は児童が「図書館や書店で見かけて興味を持ち」「友だちに借りて読んだ」上で「自分の部屋に置きたい」と、お小遣いを出すものです。
このハードルを越えるには徹底的に子ども目線になるしかありません。「教えてあげよう」は最悪、「子どもの目の高さまでしゃがむ」も児童には見透かされます。作者の『面白い」=子どもの「面白い」が最低ライン。
たとえば『さんかくのさくらんぼ』の圧倒的な完成度は、従前の児童文学としては、出版レベルに達していると思います。でもこの賞は児童文庫のプロ作家を発掘するのが目的です。どんなに大人受けのする優れた児童文学でも、優れた児童文庫=子どもがお小遣いを出して読みたい作品でなければ、賞をさしあげるわけにはいかないのです。
次回の応募を考えている方々はそこをふまえてくださいね。期待してお待ちします!
中村 航先生
『みらいの小説』
みらい文庫大賞、第一回の選考ということで、どんなものを読めるのか、わくわくしながら原稿を読ませてもらった。最終候補作のレベルは総じて高かった。この賞の今後の方向性にも影響を与えるであろう、第一回の受賞作を送り出すことができてよかった。『ロボ☆友』は、テーマ性も高く、また文章も可愛らしくて、好感のもてる作品だった。センテンスのセンスがいい。この本の読者になるであろう子供たちは、主人公と一緒に考え、物語の中で成長することができる。ただ、主人公たち、最後は飛んでほしかった。作者が書くことを恐れたのか、遠慮したのか、自然主義的にこのようなラストになったのかはわからないけれど、でもやっぱり飛んでほしかった気がした。
『エレガントなかくれんぼ』は、不思議な作品だったが、これも一発で好感を持った。主人公のキャラクターが、大人の理屈では説明がつかないのだが、ともかくキュートだ。作者は小説内の全ての文章で、読者を楽しませようとしている。テンポがよく、読者の子供たちにも好かれるのではないだろうか。
『さんかくのさくらんぼ』は、作品の完成度という意味では、候補作随一だった。読者を飽きさせることなく、ほろり、とするラストシーンまで連れていってくれる。ただ、この作品ならではの新しい要素もあるとはいえ、全体的には、既視感を覚えてしまった。優秀賞に推すか、最後まで議論が続いたが、強くは推せなかった。『子どもが先生を救う時代 軽井沢誘拐事件』は、おかしな教師が主人公。教師のドタバタは、誘拐事件というモチーフもあってか、悪ノリのコントという感じだ。教室での、教師と子どもの関係性やエピソードが描かれれば、もう少し入りやすくなるのではないだろうか。『三十六光年のリリ』は、やや説明を読まされた感じがした。人物の動きがもっとあれば、読みやすくなるのではないだろうか。書きたいシーンや書きたい世界観はよくわかるので、それを人間ドラマとして見せられると、もう一段階上の作品になると思う。
今年1月末に締め切りました、第1回みらい文庫大賞。
創刊1年に満たない時期にもかかわらず、編集部の予想を大きく上回る、 230本のご応募をいただきました。ありがとうございました!
第1回目の選考でしたので、期待も不安も大きかったのですが、応募作のレベルは非常に高く、大賞1作品・優秀賞1作品を選出することができました。
受賞作は今秋以降に出版予定です。お楽しみに!
また、第2回みらい文庫大賞の募集につきましても、こちらのページで随時ご案内させていただく予定です。 少々お待ち下さいませ。
※選考についてのお問い合わせには一切お答えできませんので、なにとぞご了承ください。
★第三次選考を通過されましたのは、以下の5作品です。
※敬称略、順不同
タイトル | 氏名(ペンネーム) |
---|---|
ロボ☆友 | 星乃ぬう |
三十六光年のリリ | はの まきみ |
エレガントなかくれんぼ | 近江屋一朗 |
子どもが先生を救う時代 軽井沢誘拐事件 | 高清水ヨオキ |
さんかくのさくらんぼ | 安田夏菜 |
★第二次選考を通過されましたのは、以下の16作品です。
※敬称略、順不同
タイトル | 氏名(ペンネーム) |
---|---|
家出少年と時々妹、そして彼女の夏休み | 高野 麻由 |
あいつは転校生 | 花月 |
ホテルとまり木 | 泉水まる |
猫の魔法使い方 | 金巻ともこ |
AKIBA BOY-ぼくと狐と子天狗とー | おおやなぎちか |
エンターテイナー貯金箱 | 松下きのこ |
ふしぎ森の秘密 | 赤羽ミオ |
ミコとミーコの九日間 | 津川 有香子 |
ロボ☆友 | 星乃ぬう |
世界はブタが救うのだ! | 森くま堂 |
三十六光年のリリ | はの まきみ |
エレガントなかくれんぼ | 近江屋一朗 |
子どもが先生を救う時代 軽井沢誘拐事件 | 高清水ヨオキ |
銀狼のクラン | 秋元 晴巳 |
ビューティフル ジンジャー! | 月島晴海 |
さんかくのさくらんぼ | 安田夏菜 |
★第二次選考を通過されましたのは、以下の53作品です。
※敬称略、順不同
タイトル | 氏名(ペンネーム) |
---|---|
知らない五人男 | 長谷川光太 |
カエルの村 | かねこたかし |
風のいただき | 瀬戸田隆文 |
ここからは遠い国 | 詠美 |
パステルフェアリーランドへようこそ | 高森美由紀 |
家出少年と時々妹、そして彼女の夏休み | 高野 麻由 |
サイバー・シティへようこそ | 東栄 義彦 |
スターダスト ~星くずたちの海~ | 森 明日香 |
中学校の怪談 | 山岸恵一 |
鳳凰学園起動部☆ | 小川 大翔 |
魔女のリボンはあかね色 | 立川ありす |
オペラ座の小さな怪物 | 相川 真 |
友×絆 | 花月 |
あいつは転校生 | 花月 |
少年達は荒野を目指す | かわむらあやこ |
森の呼ぶ声 | 古林邦和 |
ホテルとまり木 | 泉水まる |
光が降ってきた日-ぼくはぼくじゃなくなった- | 北原 末夏子 |
猫の魔法の使い方 | 金巻ともこ |
AKIBA BOY-ぼくと狐と子天狗とー | おおやなぎちか |
ヒヨコとスズメの歌 | 丸山美幸 |
妖精国の少女騎士 | 竹宮 芹 |
いつか、風車のみさきで | 氷月 あや |
エンターテイナー貯金箱 | 松下きのこ |
色とりどりの旅人 | 坂井晴香 |
ふしぎ森の秘密 | 赤羽ミオ |
ヒミツの掲示板 | 緋口 稔 |
ライトパープル・ロータス -琥珀とガラスの蓮- | 夕空 すばる |
魔女になりたい | 広都 悠里 |
月のうさぎ・レンバ | 史ノ木 三重 |
翼に焦がれるキミへ | あいさき なな |
シャルロッテとモモ | 一恋 ちえ |
守護霊は、おじさん | 堤 貴寿 |
ファンタジーも、ええやん。 | 朝井 晴日 |
ミコとミーコの九日間 | 津川 有香子 |
ロボ☆友 | 星乃ぬう |
世界はブタが救うのだ! | 森くま堂 |
三十六光年のリリ | はの まきみ |
エレガントなかくれんぼ | 近江屋一朗 |
子どもが先生を救う時代 軽井沢誘拐事件 | 高清水ヨオキ |
銀狼のクラン | 秋元 晴巳 |
フクタン | きむらともお |
冬のユウレイ | 横田 朋子 |
ビューティフル ジンジャー! | 月島晴海 |
ガラクタ・ベアー | 山藤ゆきこ |
さんかくのさくらんぼ | 安田夏菜 |
恋のために | 莉人五志一恥 |
KLON | 野口雄也 |
海辺の町のおちゃめ猫 | 道具小路 |
エースストライカーは心配性 | 雨野 ちはれ |
宇宙サミット2020 | 上野与志 |
蚊取りブタ・シスター | 小川 美篤 |
おれを「鉄トモ」と呼ばないでくれ! | 奈雅月ありす |