冒頭だけで「あ、この話読んでみたい!」と思えるような“作品の最初の最初”を募集しています。イメージは、「ここから物語が始まる!というところ”まで”」。キャラクターだけ、設定だけ、出会いだけ、アイデアだけ…どんなものでも、あなたの「こういうの描きたい!」がギュッと詰まったものを届けてください。
大人向けの小説で刊行歴のある作家さん。他社の児童向けで刊行歴のある作家さん。フィクションは書いたことがないけれど、ピンとくるテーマがあった方。デビューしたけど、2作目以降が刊行できていない作家さん…どなたでも、ご応募お待ちしています。
今回の「1章だけ大賞」では、200本を超える応募がありました。
部門を分けることで、毎年行われている「みらい文庫大賞」とは一味ちがった切り口やアイデアも多く届き、皆さんの「これ面白くない?」の提案にお応えさせていただくような気持ちで、編集部一同楽しく選考いたしました。
今回、全4部門から大賞が3本出ました。ぜひ担当と一緒に、作品完成を目指していただければと思います。また、最終選考に残った投稿作についても、選評つきで発表いたします。
いよいよ12月2日からは、第15回みらい文庫大賞の応募受付が開始となります。
賞には及ばなかった投稿作についても、1章だけでは伝えきれない魅力がきっとあるはずです。
ぜひ最後まで形にして、みらい文庫大賞へご応募いただければ幸いです。
ご応募、ありがとうございました。「エモ恋部門」は、もっとも応募数が多い部門となりました。応募された方は中学生から60代と年齢層も広く、多くの人にとって、恋が身近で物語にしやすいテーマなのだと感じました。
その反面、心を掴む1章を書く難しさも作品を読んで実感しました。「エモい」には「心が揺さぶられて、言葉では表現できないような気持ちになる」といった意味があります。
応募作には、病気などの苦難で恋が叶わない、悲しさ・切なさを表現したものが多数みられました。テーマに沿ってはいますが、既出感があり、新鮮味に欠けました。
今回は小中学生読者が共感する新しい「エモ恋」を予感させる作品を大賞・最終候補に選出しています。
ダントツに続きが読みたい作品でした。シェアハウスで暮らすことになった主人公が、そこで暮らす男の子と偶然出会う冒頭では、さりげない2人の会話に状況やキャラクターが上手く表現されていました。2章以降は恋に加え、人としての成長もみられる構成です。シリアスな側面を含むため、落ち着いた作品にまとまる可能性があります。登場人物たちの感情を瑞々しく描くことができれば、読者を惹き込む作品になると思います。
軽やかなテンポで進む会話に好感を持ちました。越してきた三つ子の中に初恋相手がいるが、誰かは不明という設定はキャッチーでエモさがあると思います。三つ子に対して、主人公の女の子のキャラクターが薄かったため肉づけが必要だと感じました。「この後の展開」での「同居」は月並みな印象なのでもうひと工夫が欲しかったです。
地の文も会話も言葉選びが上手で、親しみやすさとセンスのよさがありました。推しアイドルと恋人ごっこをするという夢のあるストーリーは、小中学生に共感を得られると思いますが、全体的に「推し」として応援する要素が前面に出ていて、恋へと進まないことから、「エモ恋」というテーマから見ると物足りなさを感じました。
真面目な主人公とモテモテの先輩のキャラクターが短い1章の中でよく描けていました。先輩のキスシーンを見てしまうくだりはインパクトがありましたが、主人公よりも先輩のキャラクターが勝ってしまうようにも感じました。主人公が徐々に先輩を好きになっていくときの揺れる気持ちをどう表現できるかが作品のキモになりそうです。
フレッシュで読みやすい文体に好感を持ちました。VIP私立校、すてきな男の子とパートナーを組むという設定は読者の心をくすぐるものだと思います。ただ、周囲からの意地悪などを経てハッピーエンドを迎えるという展開が定型的で残念でした。想定外の出来事など、見せ場があるとオリジナリティも出ると思います。
設定は荒削りで、想定読者層も若干高めの印象でしたが、味のあるキャラクターと、テンポよく繰り広げられる今っぽい会話に魅力を感じました。また、男の子を主人公にした点にも新鮮味がありました。もう少し市場を研究した上で独創的な世界観が出せるとよいと思います。タイトルもターゲットに響くものを検討することが大切です。
競技部門では、「人間ドラマと競技の面白さがうまくからんでいるか」「その競技に興味のない読者も、楽しく読めるかどうか」を評価の基準にしました。
今回の応募作は、冒頭で主人公と競技の両方の魅力を見せようとしている作品がある一方、競技の説明に集中しすぎて、主人公の魅力が今一つ伝わらない作品も多い印象でした。「小学生が読むエンタメ小説」ということに立ち返って、読者が好感を持つ主人公を作り込み、主人公の成長や仲間との関係の変化を描きましょう。
また、読み味が堅い・暗い作品も多かったです。主人公に課題や悩みがあるのはOKですが、その描写ばかりになるともったいないなと思いました。読んだら気持ちが明るくなり、心がアツくなる読み味を目指しましょう!
主人公が、優秀な水泳選手の姉へのコンプレックスを抱く中で競歩を知り、破天荒なライバルやコーチと出会い、競歩を始めるという流れがうまくまとまっていました。主人公の性格と語り口、「競歩」というテーマが大人っぽいので、もう少し低年齢向けの読み心地を意識するとよいかと思いました。
ドラゴンを操るスマホゲームをテーマにし、主人公が弟を救うために闇のドラゴンを用いて戦っていく設定は面白いと思いました。バトルシーンが面白いかどうかがネックかと思います。ダークさが魅力ですが、弟や友達との温かく楽しい交流もしっかり描くことで、主人公が必死に戦う熱さを増幅させてほしいです。
主人公とライバルの関係性がよくわかり、会話がコミカルでよかったです。子ども読者は主人公が大活躍してほしいので、設定を調整する必要はあるかと思います。また、キャラが軽快に憎まれ口をたたく雰囲気や、スポーツの厳しさをおりこんだストーリーのノリは男の子向けかと思ったので、男の子向けの作品も見てみたいです。
多くのご投稿、誠にありがとうございました。
前年同様、ハラハラ度MAXな作品は少なめでした。読者を釘付けにするような、息をのむ瞬間があるとうれしいです。
また、少しハードルがあがるかもしれませんが、定番で人気のあるテーマ(怪談、ホラー、デスゲーム、妖怪ものなど)に加えなにかもう一つ個性的な要素が加わると、従来にない新しさが打ち出せるように思います。
「対象読者からどういったものが好まれるのか研究する意欲」も常に必要となってきますので、児童文庫を読んで、多くの工夫・テクニックに気づいてもらい、チューニングを合わせていただきたいとも感じました。
歌い手×インフルエンサー×心霊という一見ミスマッチなものがうまくかけ合わさって、大変面白かったです。主人公は歌でバズりたいのに、歌で幽霊を引き寄せてしまっているという設定も無理なく展開されていました。ヒーローの祓い屋の男の子も等身大で好感が持て、恋物語としても魅力的でした。
主人公の妖怪を守る特殊怪談師の設定が良かったです。ヒーローが妖怪の祓い屋ながらも相対する主人公とバディを組むのは面白い展開でした。ヒロインとヒーローの性格がもう少し個性があると良いかと思います。「怪談」部分にもう少し外連味があるともっとメリハリがつくかと感じました。
テンポが良く読みやすく工夫を感じました。見た目とギャップのある三人のキャラクターも好感度が高く、全体的にレベルが高かったです。勇者・魔王等々、RPGのメタ的な要素が強く、想定対象読者の女子小中学生に、どこまですんなり読んでもらえるか未知数な印象もありました。
冒頭、擬音やテンポ感などで、読者を怖がらせようという「掴み」を感じて良かったです。地の文含めて全体的にキャラクターが暗いのと、主人公のパーソナリティが伝わってこなかったのが残念。後半のプロットを拝見すると壮大になっていっていたので、まずは短めの作品を完結させることを目標にしてみてください。
コメディ部門では、「明るくテンポの良い話運び」、「シチュエーションの面白さ」、「愛すべきキャラ」の3点を評価の基準にして選考をしました。中でも一番大事なのは主人公が魅力的に描けているかどうか。ただ奇抜な人間を描いた作品も見受けられたのですが、大事なのは、そのキャラの明るい言動が、読者に愛されたり、勇気を与えられるかどうか。大賞の作品は、読んでいてこちらが前向きになれるようなコミカルなキャラを描けていました。また、ラブコメはもちろん、ヒリヒリするデスゲームでも、心が熱くなるスポーツものでも、「コミカルなやりとり」は、物語展開に緩急をつけ、かつキャラクターを愛してもらうための必須のテクニックです。ぜひ皆さんコメディ精神を忘れずに、執筆に励んでください!
生まれついて超・運の悪い主人公が、「運の良さ」で勝敗が決まる(ようにみえる)ゲームに挑む…「このストーリーだからこそ、この主人公でなきゃ」という理屈がしっかりと通っており、設定とキャラの組み合わせ、すなわち企画力が光ります。そして何より、運の悪い主人公・黒羽がパワフルで可愛らしい! アンラッキーに生まれついたからこその雑草根性が、コミカルで応援したくなるキャラに昇華されています。企画、キャラともに光っていました。
恋愛にゲーム性を持ち込んだ企画が見事。「絶対に相手に婚約破棄を言わせてやる!」とても第1章らしい引きが作れていて素晴らしいです。私利私欲のために真っ直ぐ行動する主人公は清々しく、かつ二面性のある男子もキャラが立っています。婚約ライフを始めるまでの説明が少々まどろっこしいため、テンポよく進める努力を。もしくは冒頭に刺激的な展開(今回ならば婚約)を持ってくるなど、構成も意識して。
平凡な私が、悪魔のような性格の超絶イケメンに執着されてしまう…というのは王道の関係性で◎。彼だけでなく、クラス一の美少女からも愛されるところがまた美味しい。ヒーローは毒舌と見せかけて、主人公の内面の痛いところを突いたアドバイスをくれるのが素敵なところです。ただ、「豚」など見た目に対するディスは作品に古びた印象を与えてしまうので注意しましょう。
京都を舞台に、舞妓×ミステリーを描くという、新規性のある企画が素敵でした。書籍になった際のカバーイラストの方向性がすぐに浮かぶというのも、良い企画の特徴です。一方、主人公が舞妓を目指す動機がいまいち不明瞭なことや、ヒーローが、男子なのに舞妓をやっている理由も軽く、キャラの掘り下げをもっと深くする必要があります。
コアラの見た目をした、ぐうたらの妖精・スゥは、のんびりした喋り方、工夫された語尾がとても愛らしく、こんなマスコットキャラを待っていた! と言いたくなるようなキャラクターでした。「寝不足」という身近な題材を軸に人間ドラマを描くのも良い着眼点です。妖精の魔法に頼らず、主人公とスゥの奮闘によって各キャラの寝不足の原因を解消していけるかが重要なポイントです。