



第12章
舞が終わって、わたしと紅花さまは会場の外に出た。
舞手のために用意されていた休けい室で、お茶を飲む。
「お疲れさまでした、紅花さま!」
「ええ、あなたもね。どうなることかと思ったけれど、とりつくろえた……いえ、おつりがくるくらいの舞を披露できたと思うわ」
ふふん、と自慢げに笑っている紅花さまは、すっかりいつもの調子だ。
泣きそうになっているより、ずっといいね。
儀式は大成功だった。ちょっと大変な瞬間はあったけど、会場のみんなが笑顔になってくれたんだから、よかったよ!
……よかった、よね。
白竜さまも認めるくらいの、いい儀式になったと思う。これから先に起こることは、すこしつらいけど、それでもこれでよかったはずだ。
「芽衣、紅花。お疲れさま。いい舞だったわ」
聞こえた声にどきっとした。紅花さまもぴたりと固まる。
「……藍雪」
休けい室に入ってきたのは、藍雪さまだった。
静かな表情でわたしたちを見る藍雪さまに、紅花さまの眉がよる。
「藍雪、どうしてわたしを助けたの。わたしのこと、うらんでいるでしょう。それに、今回はあなたといえども、ぼう害したかったんじゃない?」
「……紅花にされたことは、忘れないわ。つらい思いをたくさんしたもの。側室の話だって、認めたくない」
うつむいた藍雪さまは、すこしの間をおいてつぶやく。
「でも、あなたは後宮にいる姫で、この国の民よ。わたしにとっては、守るべき人だわ。わたしは后だから。――それに」
迷うような表情になってから、藍雪さまが眉を下げた。
「放っておけなかったのよ」
……そうだよね。藍雪さまは、そういう人だ。
でも紅花さまはあっけにとられた顔をした。
「あなたって、なんでそうなの。むかしから、お人よしすぎるわ」
「え?」
「……なんでもない。礼は言わないわよ。あなたが勝手にしたことなんだから」
紅花さまはぶっきらぼうに言って、部屋を出ていく。
でも一度だけふり向いて、藍雪さまをじっと見つめた。
「本当に、腹が立つわね。あなたに助けられるなんて」
今度こそ紅花さまが出ていって、わたしと藍雪さまだけが残される。
「あの……、ありがとうございました、藍雪さま。すごくきれいな演奏でした」
「芽衣もきれいだったわ。たくさん練習したんだものね。すばらしい舞だった」
藍雪さまは力なく笑う。……大丈夫かな。無理してないかな。
そんな思いが伝わったのか、藍雪さまはわたしから目をそらした。
「正直に言うと、あなたたちを放っておこうかとも思ってしまったの。どうしようもなく苦しくて。ごめんなさい」
「いえ、そんな……! それでも、助けてくれたんですね」
「芽衣の言葉と衣装があったからよ」
「え?」
「不安はある。怖いとも思うし、嫌だとも思う。それでも、わたしのことを后に選んでくれた白竜さまに、顔向けできないことをしたくない。ねえ、芽衣」
ぎゅっとわたしの手がにぎられる。小さくふるえた、白い手だ。
「わたしはこれからも、白竜さまのとなりにいられると思う?」
「――なにがあっても、藍雪さまがただひとりのお后さまですよ」
藍雪さまはわたしにとって、本当に大好きで大切なお姫さまだ。
ずっとずっと、信じてる。
「白竜さまが藍雪さまに夢中になるような衣装を、たくさんつくります。どんなときでも、わたしがついていますよ、藍雪さま」
「……ええ。ありがとう、芽衣」
泣きそうになりながら笑ってくれる藍雪さまを、絶対に支えてみせる。
とはいえ。
「わたしの衣装がなくたって、藍雪さまは魅力的すぎますけどね。むしろわたしがいなくても大丈夫じゃないですか?」
「だ、だめよ! いっしょにいて! 芽衣がいなきゃ嫌!」
藍雪さまはわたわたとしながら、ちょっとしょんぼりと肩を落とした。
「だいたい、今回の儀式で芽衣はずっと紅花につきっきりなんだもの。ずるいわ。芽衣はわたしの衣装係なのに」
あ、これはもしかして、やきもちを焼いてくれてる……⁉
え、かわいい! うれしい! 最高!
「また藍雪さまの衣装もたくさんつくりますよ。つくらせてください!」
ひらひらふりふりのかわいい衣装から、大人っぽいきれいな衣装、たまにはかっこいい衣装も……! ああ、全部着てほしい!
「芽衣、顔がだらしないわ」
「すみません、想像がふくらみすぎて……!」
「もう、困った子」
くすっと笑う藍雪さまを見ていると、わたしも笑えてきた。
うん。きっとふたりなら、大丈夫だよ。
「藍雪さま! 大好きです!」
「ありがとう。わたしも芽衣が好きよ」
と、そのとき。
「――さすがに、妬けてしまうのだけど、入っても構わないかな?」
苦笑まじりの声がした。こ、この声は!
「「白竜さま!」」
「ふたりは本当に仲がいいね」
ひいっ、見られてた! ちょっとはずかしい!
藍雪さまといっしょに真っ赤になっていると、白竜さまの後ろから雷斗さまも「仲よすぎるだろ」とあきれた顔で言ってきた。
雷斗さままで! さっきのは乙女の秘密ですよーっ!
「ふたりとも、儀式終了のあいさつをするから、会場にもどっておいで」
「はい、すぐに……!」
藍雪さまが真っ赤なまま、逃げるみたいに部屋を出ていこうとする。でも。
「待って、藍雪」
かけさろうとした藍雪さまの手を、白竜さまがつかまえた。
藍雪さまはびっくりしてふり返る。
「な、なんでしょうか……?」
「さっきの舞、ふたりを助けてくれてありがとう。おかげで会場のみんなが満足していたし、紅花も芽衣も傷つかずにすんだ」
うんうん、そのとおり! すごく助かったよ!
わたしが何度もうなずくと、藍雪さまは首をふった。
「当然のことをしただけですわ」
「……そっか。うん、ありがとう。藍雪を后にしてよかった」
白竜さまも笑って、藍雪さまにうなずく。
それから、藍雪さまの手をにぎったまま、その場に片ひざをつく。……え?
「ごめんね。今回のことで、藍雪をたくさん不安にさせた。心からの謝罪と、心からの言葉を。本当に、藍雪が后でよかったよ」
「え、あ、え……っ?」
藍雪さまはうろたえて、直後に顔がぼんっと赤くなった。
いや、でも、わかるよ、藍雪さま! 見ているだけのわたしも、たぶん赤くなってる!
だって、こんなの……、ねえ⁉
「王子の仕草すぎる……!」
「王子というか、王だけどな」
小声で叫んだわたしに、雷斗さまも小声でつっこんでくる。
そうなんだけど、これはずるいよ! おとぎ話の王子じゃん! 王だけど!
「じゃあ、行こうか。ぼくも、藍雪みたいにしっかりしないと」
顔が真っ赤な女子二名、あきれる男子一名、なぜかにこにこの王さま一名。
白竜さま、お疲れだったんじゃないですか? なんか、吹っ切れた顔してません⁉
なんで⁉
わたしたちは白竜さまにうながされて会場にもどるしかない。
って、藍雪さま、しっかりして! どきどきで倒れないでーっ!
会場にもどったわたしたちは、たくさんの拍手にむかえられた。
先に来ていた紅花さまと合流して舞台に上がると、白竜さまが席で話しだす。
「ふたりとも、本当にありがとう。舞も衣装もすばらしかったよ。きっとみんなの願いが叶う。会場に飾った百命花は、国中に行きとどくよう手配した。すべての民が幸福になることを、ぼくは願っているよ」
それからいくつかの言葉がつづいて、儀式は終了……、なんだけど。
話が終わったところで、すっと白竜さまに歩みよる人がいた。
「白竜さま、せっかくですし、この場で舞手たちにほうびを与えられてはいかがでしょうか」
……大臣だ。
白竜さまのとなりに並ぶ藍雪さまが、すこしうつむいた。
ほうびって言ったら、あれだもんね……。
でも藍雪さまはすぐに顔を上げて前を見た。覚悟はできているって顔で。
舞を成功させられたら、紅花さまは側室になる。白竜さまがどんな選択をしたのか、それはなんとなくわかるよ。だって、わたしたちの舞は大成功だった。
(大丈夫、なにがあっても、藍雪さまにはわたしがついてる)
藍雪さまと目が合った。ふたりでうなずきあう。
ふたりいっしょなら、絶対に大丈夫。
「――白竜さま、お父さま。すこしよろしいでしょうか」
ふと、となりで紅花さまの声がした。まっすぐな声で言って、一歩進みでる。
「白竜さまのお言葉の前に、わたしからお伝えしたいことがございます」
え、紅花さま、どうしたんだろう。
びっくりしたけど、それは白竜さまたちも同じだった。
目をまたたいた白竜さまが、ひとつうなずく。
「いいよ、話して」
「ありがとうございます。――舞の出来次第で、わたしを側室にしてくださるというお話を聞いております。間違いございませんね?」
「……うん」
「そうですか。であれば」
紅花さまは息を吸いこんで、会場中に聞こえるようにはっきりと言った。
「わたしはそのお話を、辞退させていただきます!」
え? 辞退……? じ、たい……?
え、えええ……っ⁉
「こ、紅花⁉」
大臣がうろたえて紅花さまを呼ぶ。
でも、そうだよね。びっくりするよね……⁉ なに言ってるの、紅花さま!
でもみんなが驚いているのに、紅花さまだけは迷いのない表情で背筋をのばして立っていた。
「わたしは后選びで、藍雪に負けました。それなのに未練がましく側室の座に居座ることは、わたしのほこりが許しません」
「だ、だが、せっかく舞が成功したんだぞ! ここまでいったい……、なんのためにおまえは努力をしてきたんだ!」
「お父さまには感謝しております。富も教育も、わたしに惜しみなく与えてくださった。でも、ごめんなさい、わたしはもう負けたんです」
紅花さまがあきらめたような、でもすっきりしたような顔で肩をすくめた。
「だいたい、わたしは后にも側室にも向いていないんですよ」
「なんだと?」
「お父さまも、今日の藍雪を見たでしょう? わざわざ敵を助けるなんて、わたしには絶対できない」
藍雪さまが目を大きくさせた。それを見て、紅花さまが笑う。
「わたしはあんなにやさしくない。藍雪のようなお人よしにはなれません。そしてきっと――白竜さまのそばにいる人間は、お人よしの方がいいのです」
大臣はもう、顔が真っ青だ。
それなのに追いうちをかけるみたいに紅花さまがつづける。
「わたしの舞、途中からすこし変わったことにお気づきでしたか?」
変わった……?
あ、たしかにそうかも。笑顔が変わったような気がしたんだよね。
「あれは、あなたの言葉を参考にしたのよ」
突然、紅花さまがわたしに視線を向けた。へっ? なになに? なんの話⁉
「儀式がはじまる前に、あなたが言ったんでしょう。みんなのために舞うって」
「……ああ、はい! 言いました!」
「でもわたしは、だれかを思うやさしさなんてない。だから、真似したの。そういうことが一番得意そうな姫の表情を」
「それって、もしかして……、藍雪さまですか?」
「そうよ。藍雪しか思い浮かばなかった」
あ。だからあのとき、紅花さまを見て「藍雪さまっぽい」って思ったのかな。
「で、でも、そんな簡単に真似できるものですか⁉」
「そこはわたしだから。当然でしょう?」
ふんっと胸をはった紅花さま。さすがすぎる……。
「まあ、ともかく、藍雪の表情や雰囲気を真似したら、みんながもっと舞に夢中になるのがわかった。みんなが藍雪を望んでいたということよ。わたしはまた、藍雪に負けたの。もう完敗よ。笑えるくらいの大完敗!」
言葉どおりに、紅花さまが声を上げて笑う。すごく晴れ晴れしい顔で。
しばらくして笑いやんだ紅花さまが、白竜さまに向きあった。
「認めましょう。后に向いているのは藍雪です。わたしでは后も側室も務まらない。だから今回のお話は辞退させてください」
それから、紅花さまは藍雪さまを見る。
ぼうぜんとしている藍雪さまをまっすぐな目で見すえて、紅花さまが言った。
「さっきも伝えたけれど、礼は言わないわ。あなたが勝手にしたことだもの」
「……ええ」
「それでも、助かった。その事実だけは伝えておくわね。それから――」
紅花さまは深呼吸してその場でひざをつく。
深く頭を下げて、胸の前で手を合わせた。
「后殿下に、これまでの無礼をおわびいたします」
ずっと会場はざわついていたけど、その騒ぎがひときわ大きくなった。
だって……、紅花さまが謝罪してる⁉
しかも紅花さまのこの頭の下げ方って、すごくかしこまったものだよね⁉
ひざをついておじぎするのは、さっきの白竜さまと同じだ。だけど、白竜さまの仕草は、おとぎ話の王子って感じだった。それに比べて、紅花さまのこれは、後宮の伝統的な作法のひとつ。身分が高い人におじぎをするときのものだ。
つまり紅花さまが、藍雪さまを自分よりもえらい人って認めたってことなんだよ。
あの紅花さまが……!
「許してくれなんて言わない。それでも、悪かったわ。嫌がらせをされるつらさは、今回身を持って知ったから」
紅花さま……。そっか、わかってくれたんだ。よかった……。
紅花さまがそれに気づいたなら、きっとなにかが変わるよ。
いろいろと大変な『百命花の舞』だったけど、大変だったぶん、紅花さまもたくさん思うところがあったのかもしれない。
(あとは、藍雪さまがどうするか……)
藍雪さまは静かに席から立ちあがって、紅花さまに歩みよっていく。
「簡単に許すとは言えないわ。紅花のしたことで、わたしも芽衣もほかのみんなも傷ついた。それを心に刻んでほしい」
紅花さまの前まできた藍雪さまは、迷わずにその手を差しだした。
「だから、紅花、これからの態度で示してちょうだい。あなたの反省と、本来のあなたの強さを」
そう言ってから、藍雪さまは瞳をゆらした。
「……本当にいいの? 側室にならなくて」
「いいわよ。わたしには向いてないから。だからあなたは、白竜さまのとなりでふんぞりかえっていればいいわ」
「……ええ。ありがとう、紅花」
藍雪さまの手をとった紅花さまが立ちあがる。
(ああ、どうしよう……。わたし、泣きそうだよ!)
后選びのときにふり払われた藍雪さまの手を、いまは紅花さまがしっかりにぎっている。それだけで、わたしは涙がぼろぼろあふれそうになった。
だってきっと、藍雪さまは紅花さまと仲直りしたかったと思うから。
本当に……、よかったですね、藍雪さま!
「芽衣」
紅花さまがわたしを呼んだ。あ、え? わたし⁉
「な、なんですか、ちょっともう、わたしにはよゆうがないんですが……」
というか、はじめて名前を呼ばれた気がする!
「あなたにも、悪いことをしたわね。あと、衣装をつくってくれてありがとう」
「えええっ……!」
もう、やめて! わたし、いっぱいいっぱいなんだからーっ!
「い、いいんですよ、そんなの! わたしも勝手にしただけですし!」
「あら、そうね。じゃあいまのお礼は取りけしで」
「え⁉ だ、だめです! 返品不可です! たしかに受けとりましたから!」
ぶんぶん首をふると、紅花さまはおかしそうにふきだした。
でも扇をばっと広げて、口もとを隠す。
「とはいえ、藍雪がすこしでも后にふさわしくないことをしたら、その座を奪いに行くから、覚悟なさい! あなたと仲よしこよしする気はないわ!」
「……ええ。そうならないよう、努力するわね」
藍雪さまもおかしそうに笑いながら、うなずく。
もう仲よしじゃないですか! ふたりともかわいいなあ!
「――そういうわけですから、お父さま。申し訳ございません」
ふと、紅花さまが大臣を見た。大臣はぼうぜんと立ちつくしている。
「いまはわたしの負けです。でもわたしのほこりをかけて、あきらめることはいたしません。后や側室の形ではないかもしれないけれど、必ずお父さまの期待に応えてみせます」
「……紅花」
「本当に、ここまで育ててくださったことに感謝しているんです。だからどうか、わかってください。あなたの娘として、もっと強くなりますから」
大臣はなにか言いたそうに、口を開く。
でもぐっと言葉を飲みこんで、深いため息をついた。
「……そうか。紅花がそう言うのであれば、つぎに期待しよう」
肩を落として、大臣は自分の席にもどっていく。
なんとか大臣にも、理解してもらえたっぽい……?
(わかる気はするけどね。いまの紅花さまには、なにを言っても勝てないって感じがする)紅花さまの意思は固そうだもんね。
「話はわかったよ」
それまで黙っていた白竜さまが、ほほ笑んだ。
「側室の件は白紙にもどそう。舞手のふたりには、べつの形でほうびを与えるから、すこし待っていてほしい。それから、ぼくも言いたいことがひとつある」
白竜さまが、会場を見回した。
え、なんですか? いまならなんでも、にこにこで聞いちゃいますよ!
「今後、側室の話はすべて断るから、貴族たちはそのつもりでいてほしい」
……え?
わたしと藍雪さまは、同時に白竜さまに視線を送った。
白竜さまは真剣な表情で貴族たちを見ている。
「自分の后ひとりすら幸せにできない人間が、王になる資格はない。今回の件で藍雪には心配ばかりをかけた。同じことを繰りかえす気はないよ」
ふっと雰囲気をやわらげて、白竜さまが藍雪さまを見る。
「遅くなってごめんね。もっと早く、こうしていればよかったんだけど」
「いいえ、そんな……、でも、いいんですか?」
「もちろん。よく思わない貴族たちもいるだろうけれど、話しあっていくよ。それも王の務めだ。藍雪、もうきみを泣かせないからね」
「……ありがとうございます!」
藍雪さまはかあああっと赤くなって、涙目でうなずいた。
その横で、わたしもぼろぼろと泣いちゃうのが止められないよ……!
これで本当の本当に、側室に悩まされることがなくなったんだよね⁉
「藍雪さま、よかったですね!」
「……もう、どうしてわたしより芽衣が泣いているの?」
藍雪さまは泣き笑いしながら、わたしのほほをなでてくれる。
だって、こんなの泣くなって言われても、無理ですよ!
会場では「側室を全部断る⁉」ってあせっている貴族たちの声がした。
でも「藍雪さま、よかったですね~!」ってわたしと同じように喜んでくれているお姫さまや宮女たちもいるみたいだ。わかる、めちゃくちゃよかったよーっ!
いますぐみんなで抱きしめあいたい! 見物席との距離が遠いのがにくい!
って、あ! 杏、見つけた!
見物席のすみっこで、ばあやさんと杏が手をとりあって、こっちを見ていた。
ぶんぶん手をふれば、ふりかえしてくれる。杏~、ばあやさん~っ!
「さて、改めて『百命花の舞』を終わらせようか」
白竜さまが手を鳴らして、空気を変えた。
藍雪さまはほほ笑んで、白竜さまのとなりに帰っていく。
「舞を披露してくれた紅花と芽衣に、拍手を!」
わたしは紅花さまとうなずきあって、衣装のすそをつまんで一礼する。
(いい儀式だった、いろんな意味で!)
今日一番の拍手が会場にあふれた。
夏の日差しはきらきらしていて、風は気持ちがよくて。
百命花の香りがすーっと胸を満たしてくれる。文句なしに、最高だね!
『百命花の舞』、みんなの笑顔に囲まれて、無事に終幕です!