



第●章
会場に入ると、すうっと気持ちのいい香りがした。
あちこちに飾られた百命花の香りが、この場所に満ちているんだ。
(いま、みんなが、わたしたちを見てるんだよね)
舞台までの道を歩くわたしは拍手に包まれていたし、会場中から視線を浴びていた。
ちょっと緊張するかも……。でも。
「今日にぴったりの衣装ね、いいじゃない」
「ええ、百命花みたい! きれい~!」
よかった! ほめてもらえてる……!
歩くたびにゆれるすそやそでを見下ろして、にんまり笑っちゃう。
そうそう、いいでしょ、この衣装! 我ながら最高だと思うもん!
今日のわたしと紅花さまの衣装は、つやのある淡い黄色の布でつくったんだ。
せんさいなその色合いは、百命花と同じもの。でも色だけじゃないよ!
たたずまいも、百命花を思わせる衣装になってるんだから!
舞いやすいように短めにつくった下衣は、すらっと足もとに落ちる形にしてある。今回は宝石を使わず、白い糸で刺しゅうだけをほどこした。
そのおかげで派手すぎない、百命花の清らかさを表現した衣装になったんだ。
とはいえ、清楚なだけじゃない。つやのある生地は高級感があるし、ひとつひとつの刺しゅうをていねいにしたから、華やかさもばっちり。
清楚に、美しく、華やかに。いいとこどりをした衣装ってこと!
「会場の反応、悪くないわね」
紅花さまが満足そうに笑って、肩にかかった赤い髪をはらう。
今日の紅花さまは、髪を頭の右側でひとつに結んで垂らしていた。
ちなみに、わたしの髪は頭の左側で、同じように結んである。
紅花さまの髪型と左右対称。ふたりの舞手にはぴったりの髪型でしょ?
化粧もおそろいで、ひかえめだけど華やかなものにしてあるし。
うん、やっぱりわたしの計画は大成功だね! なんか、楽しくなってきた!
いままでで一番きれいな舞を披露できそうかも!
(……って、あれ?)
舞台はもうすぐそこに近づいてきていた。その手前に、琴が置かれている。
わたしたちの舞のために用意されているものだと思うんだけど……。
「あの、紅花さま」
呼びかけると、紅花さまも眉をひそめてわたしを見た。
「これ、おかしくないですか?」
「……いまはまず、舞台に上がるわよ」
紅花さまは固い表情のまま、舞台に上がっていく。
会場前方の席には、紅花さまが活けたあの花が飾られていた。その席に、白竜さまと藍雪さまが座っている。
舞台上で、紅花さまは深く一礼した。
「人々をいやす花の舞、ささげさせていただきます」
舞手のあいさつだ。これが終われば、さっそく舞がはじまるはず。
そのはず、だったんだけど。やっぱり、おかしいよ。
(演奏が、はじまらない……!)
わたしはふり返って、琴の置かれた場所を見た。
そこには、弾き手もいるはずだ。なのにいま、琴の前にはだれもいない。
琴を演奏するって言っていたお姫さまの姿が、どこにもないんだよ……!
「……ねえ、音楽は?」
「どうして舞がはじまらないのかしら?」
ざわざわと、会場に落ち着かない空気がただよいはじめた。
こ、この空気、まずくない? まずいよね? 絶対まずい!
なんで、お姫さまがいないの⁉
「あ、もしかしてあのお姫さま、さらわれたとか……⁉」
紅花さまの舞を失敗させたいって思う人たちが、後宮にはたくさんいたはず。
そのだれかが、舞のじゃまをするためにお姫さまをさらったのかも⁉
「――ちがうわね」
となりの紅花さまが、低い声で言ってうつむいた。え?
「あの姫はきっと無事よ。わたしは彼女に……、裏切られたんだと思う」
「裏切られたって……、え、なんで」
「もともと彼女は、報酬が目当てでわたしに協力してくれていただけ。前払いでたっぷり報酬は払っておいたけれど……、彼女だって姫だもの。わたしをけおとしたいと思っても不思議じゃない」
「そ、そんな……!」
「報酬さえ払っておけば大丈夫だろう、なんて油断したわ。まさか持ちにげされるなんて。最悪よ」
たしかに、信用できないお姫さまだなとは思っていたけど、協力するって言ったのに裏切るのは、ひどすぎない?
全部、あのお姫さまの策だったのかな。
ぎりぎりまで油断させて、確実に紅花さまを困らせるための。
(ひどすぎる……!)
というか、この状況、どうすればいいの⁉
「――舞台に上がったからには、音楽がなくても舞うしかないわ」
ざわざわ、ざわざわ。
会場の騒ぎは大きくなっていく。これ以上立ちつくしていたら、きっともっと居心地の悪い空間になるんだと思う。
紅花さまが言うとおり、やるしかないのかな。
「さあ、早く。扇を構えなさい!」
「……はい!」
わたしは橙色の扇を広げて、紅花さまのとなりで深呼吸をする。
(でも、どうしよう、心臓の音がうるさい)
(みんなの視線がからまってきて、体が重い)
(ううん、だめ、集中しなきゃ。失敗なんてできないんだから)
紅花さまが合図を出してくれる。
「一、二の三……!」
舞のはじめの動きを体がなぞる。何回も練習したおかげで、慣れた動きだ。
だから大丈夫、大丈夫。大丈夫……、だよね?
琴の代わりに、紅花さまが旋律を口ずさんでくれていた。
だけど、その声がふるえている。
「あら。演奏はないの?」
「なんだか変じゃない? 紅花さまって、こんなに舞が下手だったかしら?」
「もうひとりの舞手もぎこちないし。なあに、これ?」
「ねー、貴族の舞ってきれいだって聞いたんだけど、微妙だね。せっかく宮廷まで来たのにさ」
ひそひそとした声のはずなのに、みんなの声が全部聞こえてくるみたいだ。
会場の空気はそれだけ冷えていた。……どうしよう、怖い。
となりを見てみるけど、紅花さまも苦しそうな顔で舞っている。
これ、本当に大丈夫なのかな。
ああ、心臓うるさい。汗が冷たい。くらくらする。
つぎのふりって、どんなだっけ?
わからないよ。つらい。きつい、怖い――!
「興ざめだな」
視界のはしで、貴族のひとりが立ちあがるのが見えた。その男の人は肩をすくめて出入口に向かっていく。しかも、それにつづいて何人かの貴族も立ちあがっているのが見えた。
ちょ、ちょっと、待ってよ! まだ舞は終わってないのに⁉
わたしたちの舞は見る価値もないってこと⁉ そんな……。
「……あ」
ふと、紅花さまが歌うのをやめた。こ、今度はなに⁉
紅花さまは青白い顔で、見物席の一点を見つめている。そこにいたのは――、紅花さまの父親、大臣だ。しっかりしなさいって言いたそうな顔で、しかめっ面をしている。
とたんに紅花さまは、くしゃっと表情を崩して固まった。
でも、待って、そこで止められたら!
「いっ……」
わたしの手が、紅花さまのうでにぶつかった。
その拍子に、紅花さまの手から扇が落ちる。
「ご、ごめんなさい、紅花さま!」
しん、と場が静まりかえった。みんなの目が、わたしたちを見下ろしている。
わたしも紅花さまも動けない。完全に舞が止まっちゃった。
(だめだよ、これ。本当に、だめだ……)
頭に浮かぶのは、「失敗」の二文字。
ここから、どうやったって巻きかえせる気がしない。完全に大失敗だ。
今日まで、紅花さまも侍女たちも雷斗さまも、みんな助けてくれたのに。
杏やみんなの、大切な人を思う心を背負っていたはずなのに。
それなのに、わたし、舞台で立ちつくすなんて。
(頭の中が真っ白で、ふりつけもわからない。紅花さまも固まってるし。どうにかしなきゃいけないけど……、どうすればいいの!)
――藍雪さま。
つい、会場の前方にいる藍雪さまを目で探していた。これまで後宮で苦しかったときは、ずっと藍雪さまがそばにいてくれたから……。
藍雪さまと目があった。いつもの笑顔はなくて、すこしつらそうな顔で舞台を見ていた藍雪さまは、ゆっくりとまばたきをする。
それから、静かに立ちあがって、わたしたちの方に歩いてきた。
(これって、もしかして、助けてくれるの……⁉)
とたんに、ふわっと心が軽くなる。
藍雪さまがいてくれるなら、わたしはなんだってできるから。
ありがとう、藍雪さま……!
わたしは藍雪さまにかけよろうとした。
――だけど、藍雪さまはわたしを見なかった。
無言でわたしの横を通りすぎていく藍雪さま。
すうっと、わたしたちの間に風が吹きぬけた。
わたしの後ろにあるのは、出入口だけだ。それなのに藍雪さまはそっちに歩いていく。
え、うそ、まさか。
(……帰っちゃうの? ほかの貴族たちみたいに?)
『百命花の舞』を成功させたいって、藍雪さまは思っていたはずだ。
だから、わたし、今日は絶対に成功させたかった。
それに、藍雪さまなら紅花さまを困らせたくないと思うはずだから、わたしはこの舞台に立つことにしたのに。
藍雪さまは、そんなことを望んでいなかったのかな。
(やっぱり、わたし、間違えてた……?)
舞手を辞退した方がよかったのかな。藍雪さまが望んでいたのは、それだったのかも……。そうだよね、あんなに白竜さまが大好きなんだもんね。
わたし、藍雪さまを困らせて、儀式も失敗させちゃった?
(もう、だめかも)
ぎゅっと苦しくなって、視線が下に落ちる。
目の前がぼんやりにじんで、なにも見えなくなった。
泣きたくないのに、どうすればいいのかわからない。わたしはただ、みんなに幸せになってほしかっただけなのに。
こんな舞台、早く降りて逃げだしたいよ……っ!
ぽろろん。
そのとき、突然、琴の音が響いた。やさしくて、まっすぐな音が。
(この音って……)
はっとして、顔を上げる。たしかに聞こえた、琴の音。
――ああ、そうだ。
わたしの後ろにあるのは出入口だけ? ううん、そうじゃない。
そこには。琴があるんだよ!
だれも弾き手がいなかった琴。いま、その前には藍雪さまがいた。
藍雪さまが、ぎゅっとなにかにたえるように目を閉じてから、息を吸いこむ。
指先が弦を弾いた。音が会場にあふれていく。
やわらかな、わたしたちを包みこんでくれるような旋律がほほをなでる。
何度も聞いた『百命花の舞』の曲だ。
藍雪さまが、わたしたちのために演奏してくれてる……!
(すごくつらくて、悩んでるはずなのに……、藍雪さま、助けてくれるんだ)
背中を押すような琴の響きに、ぶわっと涙があふれた。
がんばってって、藍雪さまが伝えてくれてる。負けないでって。
藍雪さまは、どんなときでも困っている人を見捨てることなんてできない、やさしいお姫さまなんだよ。
――ありがとうございます、藍雪さま。
わたし、藍雪さまが大好きだ。
力任せに目もとをこすって、前を見る。
「紅花さま、もう一度舞いましょう。舞はまだ、終わっていません!」
「え……?」
落ちていた扇を拾って、ぼうぜんとする紅花さまの手ににぎらせた。
「まだまだ、ここからです。大丈夫、今日のわたしたちは最強で最高なんですよ! 一度の失敗なんて関係ありません!」
でも紅花さまは立ちつくしたままだ。だったら、わたしが先陣を切る!
深呼吸して、自分の扇を構えた。
旋律とふりつけ……、うん、頭の中でかみあってきた! いける!
清らかに高貴に美しく。花がほころぶような舞を見せてあげるから!
音と体が重なって、わたしはまた舞台の上で動きだす。
見苦しいだけなのに……って、そんなことを言いたげな視線がまとわりつく。
でもいいよ、見ていてくれるなら好都合だもん!
無視されるよりずっといい。ぎゃふんと言わせてみせるから!
(ここの手のふりは、そでをなびかせて!)
軽くて長いそでは、うでの動きにあわせて風にふわりとなびく。
「わ――」
はい、いま見とれて声を上げちゃった人! ありがとう! きれいでしょ?
(今度は扇に注目してね!)
ぽんっと扇を空に放りなげる。くるくると回る扇の橙色が空の青によく映えた。それを受けとめて胸の前にかざせば、淡い黄色の布地に橙色が咲く。
色合い、見とれちゃうでしょ? それも計算済みだよ!
(つぎは、背中のりぼんをゆらして、幻想的に!)
くるりと舞えば、背中につけたりぼんが弧をえがく。
それは蝶の羽や天女の羽衣みたいに、軽やかに舞を彩ってくれた。
夏の風にゆれる涼やかな百命花。その花畑で舞う花の精。
そんな夢を、みんなに見せてあげるから……!
藍雪さまが響かせる音は気持ちがよくて、わたしの体もいつもより軽い。
いまなら、いくらでも舞える気がする!
「……あの子、かわいくない?」
だんだんと会場の空気が変わってきた。帰ろうとしていた貴族たちも、足を止めている。
よしよし、途中退場なんてさせないよ! ちゃんと見てて! 衣装も、舞も!
(あ、雷斗さまだ!)
いまさら気づいた。白竜さまの後ろには、雷斗さまがいた。
目が合うと、「その調子だ」って言いたそうに笑ってくれる。
うん、ありがとうございます!
「――ひとりで楽しんでるんじゃないわよ。腹立たしいわね」
「あ……、紅花さま!」
涙をふいた紅花さまが、とんっとわたしのとなりに並んだ。
勢いよく扇を広げて、紅花さまはわたしをにらむ。
「あなただけを目立たせるわけにはいかないでしょ。ここは、わたしのための舞台なんだから!」
……そうだね、こんなところで泣いているだけのお姫さまじゃないよね。
「うん、いいですよ! いっしょに舞いましょう!」
勝気な表情がもどってきた紅花さまが、一度目を閉じて、開く。
そうしたらもう、そこにあるのは、天女みたいなやさしい笑顔だ。
(うわ、さすが。どきっとしちゃった)
紅花さまの舞がはじまる。赤い髪をなびかせて、やさしい笑顔で、舞台の上を舞いおどる。ひらひらと衣装が風を起こすと、百命花の香りが会場中にあふれていくのがわかった。
紅花さま、やっぱりきれいだ。指先にも髪の一筋にもすきのない、完ぺきな舞。
その姿がまぶしくて、きらきら輝いて見える。
ほんと、くやしいけど……、すごいお姫さまだよ!
「な、なに? 急にふたりともきれいになってる……」
「さっきとは大違いじゃない。なんなの、これ」
もうみんなの視線も怖くない。楽しい。この舞、すっごく楽しいよ!
「いいえ、まだよ。こんなもので終わらせてたまるもんですか!」
ふと、紅花さまの声がした。
(ん? あれ、え?)
舞いながらとなりを見て、びっくり。
なんか、紅花さま、さっきよりきれいになってない?
笑顔が変わった気がする。いままでの笑顔もきれいだったけど、いまのこれはなんというか……、わたし、この笑顔を知っているような気がする。
そのとき、紅花さまがわたしを見た。ふわり、と笑みが向けられる。
『芽衣』
(……んんんっ⁉)
なぜだか、藍雪さまのやさしい声が聞こえたような気がした。目の前にいるのは紅花さまなのに。紅花さまと藍雪さまの笑顔が、かぶって見える。
(というか、この紅花さま、完全に『藍雪さまそのもの』なんだけど⁉)
え、なにを言ってるかわからない? わたしも混乱中だよ!
でも「紅花さま、すごい!」って会場の熱が高まっていくのがわかった。
みんな、いまの紅花さまに見とれてるんだ。なんなのこれ!
と思ったら、紅花さまが一瞬もとの勝気な表情にもどった。
「ほら、ぼさっとしない。つぎ、一番の見せ場でしょ! 決めるわよ!」
「は、はい……!」
その変わりようにびっくりだよ。でも、たしかに舞の終わりが近づいてきてる。
じゃあ……、いきますか! 最大の見せ場!
実はこの衣装、秘密を隠してあるんだよ。
やっぱり、ただの衣装じゃつまらないもんね。人生には驚きがないと!
藍雪さまの琴の音も、最後に向けて盛りあげてくれている。
よし、ここで決めるよ。全員、見ててね。
今日一番の見せ場まで、三、二、一……。せーの!
わたしと紅花さまは同時に、腰の帯をはずした。とたんに、
「えっ⁉ なにあの衣装!」
「うそ、花が咲いたみたい!」
「あれって百命花⁉」
大きく花開いた新しいすそを、わたしはふわっとゆらした。
さっき帯をはずしたときに落ちてきた『第二のすそ』だ。
そう、今日の衣装、実はね……二重構造になっていたんだよ!
短くすとんと落ちる最初のすそは、内側の『第一のすそ』。
それから地面に届く長さで、くるんと先が外側に丸まった、百命花の花びらと同じ形の『第二のすそ』を外側に。
ふたつを重ねてつくって、外側の『第二のすそ』を隠すように『第一のすそ』をたくしあげて、二重にした帯で留める。
そうしたら、外側の帯をほどくと、隠されていた華やかなすそが落ちてきて、一瞬で衣装が変わったように見えるんだ!
まるで、花のつぼみが、いま開いたみたいに見えたんじゃないかな!
「いまの、どうやったの⁉ 魔法みたい!」
「あんな一瞬で……。すごい。というか、かわいい、あの衣装!」
うんうん、みんなびっくりしてる。その反応が見たかったんだ!
でも舞はつづけないとね!
扇を下から上に大きくふりあげると、百命花の花びらが空に舞いあがった。
実は、さっきのすその中に百命花の花びらをたくさん隠しておいたの。
帯をほどいたとき、すそと同時に花びらが現れて、わたしたちのまわりを舞っていた。
まさに花の精って感じに見えているはずだよ。
よーし、この調子で、最後まで舞っちゃうからね!
ふわふわ舞う衣装。ひらひら舞いおどる花びら。
やさしい琴の音に、くるくる舞いつづけるわたしたち。
客席のみんなが、笑顔になっていくのがわかる。
白竜さまも雷斗さまも、笑って見守ってくれていた。
杏やほかのみんなも、楽しんでくれているかな。そうだといいな。
楽しくなったら、きっといいことが起こる。病も吹きとばせるかもしれない。
(みんなみんな、幸せになってほしい)
琴の音が鳴りひびく。もう、終わりの時間が近づいてきていた。
ああ、楽しかった。本当に、楽しかった!
「あなたの衣装、悪くないわ!」
舞台上で交差したとき、紅花さまが笑ってくれた。
いじわるでも、つくったような笑顔でもなくて、純粋な笑顔だ。
「はい!」
わたしと紅花さまは、とんっと背中合わせになる。
夏の風が吹いて、わたしたちのまわりに百命花の花びらが舞いあがった。
花びらは会場の客席すべてに届いて、もっともっと高く空に舞う。
どうかみんなの願いが、空に、神さまに、届きますように――!
はあ、はあ、と肩で息をする。旋律がゆっくりとほどけていく。
代わりに、大きな拍手が生まれるのが聞こえた。