第6回 集英社みらい文庫大賞[小説部門]結果発表


このたびは、たくさんのご応募をいただき、まことにありがとうございました。

138編の応募作品を一次~三次選考にて厳正に選考し、三作品を最終候補作として選出いたしました。6月2日(金)に都内で行われました最終選考会にて審議の結果、大賞の該当作はなく、二作品へ優秀賞を授賞することに決定いたしました。 宮下恵茉先生にいただいた選評と、優秀賞受賞者二名の受賞コメント、最終選考会の様子(抜粋)をご紹介いたします。

今後も、小・中学生読者に喜んでもらえる、パワーあふれる作品をお待ちしております!

※選考についてのお問い合わせには一切お答えできませんので、なにとぞご了承ください。
※第7回の募集詳細につきましては、ホームページで告知させていただきます。

第6回「集英社みらい文庫大賞」受賞作

※ペンネーム50音順

大賞:該当作なし
優秀賞:『部活は恋色、変奏曲(パルティータ)』
遠井玲音(とい・れいと)
【受賞コメント】
この度は多くの応募作の中から選考頂き、ありがとうございます。とても嬉しく思っております。応援してくださった方々にも感謝の気持ちで一杯です。今作は私自身が吹奏楽部に所属し、また、作家を夢見始めた中学時代を思い出しつつ書きました。今回受賞させて頂いたことで、その夢にぐんと近づけたと思います。今後も、読み手の心を動かしたいという気持ちを持って、作品を生み出していこうと考えています。
【あらすじ】
中学2年生の涼(すず)は、吹奏楽部でチューバを担当している。コンクールで金賞を獲得することを目標に、日々の練習を重ねていた。ある休日の校内で、涼は自分を手助けしてくれた野球部の3年生・吉宮先輩と知り合う。先輩の明るい笑顔に触れて、初めて知る気持ちが涼に芽生え…。
優秀賞:『実はいっしょに住んでます』
夜野せせり(よるの・せせり)
【受賞コメント】
物語を読むのは好きだけど、作文を書くのは嫌い。私はそんな子どもでした。それがまさか、大人になって、小説を書くことに夢中になるとは、人生わからない。しかも、このような素晴らしい賞を頂けるなんて、本当に、嬉しさで胸がいっぱいです。選考いただいた先生、編集部の皆様、これまで支えて下さったすべての皆様に感謝申し上げます。子どもたちが時を忘れてのめり込むような、そんな物語を書き続けるのが目標です。頑張ります。
【あらすじ】
小学5年生の千歌は、地味で目立たない女の子。まんがを描くのが好きだけど、最後まで描きあげたことがない。そんなある日、千歌のパパが再婚することになった。再婚相手の息子に会ってびっくり。なんと千歌と同じクラスの人気者・渚と、その兄の昴で…。

選考委員:宮下恵茉先生 『パワー&オリジナリティ』

   選考会の前日は、眠れませんでした。だって、その人の人生がかかっているのですから! 何度も読み返し、考えぬきました。しかし残念ながら、今年も大賞を選出することができませんでした。応募要項に謳われていた『パワーあふれるオリジナルのエンターテインメント小説』がなかったからです。



●「中学☆デビュー ~はじめての寮生活、そして恋~」    児童文庫向きのスピード感、軽さがあり、イラストにしやすい場面ももりだくさん。展開の仕方もうまい作品でした。その反面、キャラクターの掘り下げが甘く、話の流れや設定も、作者の都合ですすんでいる印象を持ちました。いろんな要素を盛り込みすぎてどれも薄まっているのももったいないと感じました。

●「部活は恋色、変奏曲(パルティータ)」    今回、最終選考に残った三作品の中で相手役となる男の子のキャラが一番魅力的でした。随所にハッとするフレーズがあり、とてもセンスがある書き手さんだと感じました。ただし圧倒的な推敲不足で、構成にも問題があります。肝心の主人公に魅力を感じられず、心を寄せて読むことができませんでした。

●「実はいっしょに住んでます」    三作品の中で一番書きなれている印象を受けました。最初から展開が早く、最後まで飽きることなく一気に読ませる力がある作品でした。ですが、途中から話がちがう方向に向いてしまい、読後すっきりしませんでした。なにより、相手役となる男の子のキャラに好感を持てなかったところが残念でした。



   今回最終選考に残った三作品に共通して感じたことは、どこか既視感があり、作者の熱い想いが伝わらなかったこと。また、キャラクターの掘り下げが浅いのも気になりました。もっとおもしろくなる要素がある作品ばかりなのに、とても残念です。おもしろそうなエピソードを繋げているだけでは、読者の心に届きません。未来を生きるこどもたちに、何を伝えたいか。あなたのあふれる思いをぜひ、作品にどーんとぶつけてみて下さい。

最終選考会での選考委員発言(抜粋)

『部活は恋色、変奏曲(パルティータ)』

男の子のキャラは魅力的。主人公の存在感の薄さが課題?

宮下先生
「全体的には、時々はっとするようなフレーズがあり、感覚がすごくいいなと思いました。タイトルの読み方、途中に吉宮先輩の視点の章が入っているところなども、それが効果的だったかは別にして、工夫はしてるんだなと」
編集A
「音楽っていいテーマだなと思っていて、今回の3本の中では一番書きたい事がはっきりしていていいなと感じました」
編集B
「表現したいことを内にたくさん秘めている書き手だろうなと感じるのですが、そのアウトプットの仕方がシンプルじゃなくて、比喩や慣用表現が類型的というか、手垢のついたような表現を多用しすぎていて、その良さが伝わりづらい。このあたりは担当編集者がつけば段違いに良くなるのではと思います」
編集C
「恋愛ものとして読ませたいのか、部活ものとして読ませたいのか、欲ばって多くの要素を詰め込みすぎな気がしました。恋愛物はどれだけ読者がああ、わかる!と共感したり、ドキドキするようなエピソードを書けるかなんだけど、先輩がイスを運んでくれるシーンがよくて、読者にフィットするようなドキドキ感は書ける方なのかなと思いました」
宮下先生
「この3作品の中では、男の子のキャラは吉宮先輩が一番魅力的だなと思います」
編集D
「出会ってすぐに頭をポンポンされたり、夏祭りに行ったり、手をつないだり、恋愛のポイントポイントは抑えられているのですが、胸キュン要素ばかりを入れることに重点が置かれていて、キャラクターの魅力が伴っていないような印象を受けました」
編集E
「そうですね、夏祭りなど、甘酸っぱい王道なポイントはやっぱり読者は好きだと思うので、定番のネタではありますが、もう一段階、この作者ならではの表現などを取り入れられるとさらに良くなるのかなと思いました」
編集F
「先輩の方は人となりというか、キャラクターはわかったのですが、主人公の存在感のうすさがもったいないなと思いました。物語の構成にはまだ課題があるかもしれないですが、読者に身近なエピソードが多く描かれているので、求心力があるのではという印象はあります」
編集G
「好きっていう気持ちがまだわかっていない女の子の話だけれども、主人公の気持ちが作者の中でも整理しきれてない感じがします。キャラの掘り下げがうすく、読後感が浅い気はしました。でも難点もあるけど、直せば良くなる作品なのではと思いました」
編集H
「残念だったのが、最初から両想いというのが読者にわかってしまっていたところです。恋愛物としてはそれでつまらなくなってしまったのがもったいない」
宮下先生
「部活内での人間関係、クラスの様子などがあまり描かれておらず、主人公、南先輩、吉宮くんの三人だけでストーリーが展開していっているので、世界が狭すぎる印象もあります。他の二作も同じなのですが、情報が後出しで、構成をもっと練って欲しかったです」

『中学☆デビュー ~はじめての寮生活、そして恋~』 

各所に魅力的な場面が。でもエピソードをつなぎ合わせるだけではだめ。

-あらすじ-小6の冬に父親の海外転勤が決まった柚花は、寮のあるクローバー学園に入学することに。
「これまでの地味な自分にさよならして、恋をしたい!」と中学デビューを決心するが…。

宮下先生
「ガーデンパーティーや背中合わせの告白など、ここにこんなイラストを入れたらいいなあって思い浮かびやすい、そういう場面の作り方が上手いと思いました。冒頭からお話に入るのもよかったです」
編集F
「全体的にお話は読みやすいですし、スピード感があるなという印象はありました。友達とケンカをしたり、そういう内容については読者にとって親近感はあるのかなと」
編集H
「女の子のキャラとかも親しみやすいですし、楽しいムードを作るのは上手で、そこはとても魅力的だと思いますね」
編集G
「感情の起伏が起きやすいエピソードが順番に並んでいて、そのバランスの良さがいいなと思いました。飽きさせずに読ませるというか、読んでいるほうも感情移入がうまく出来ればのって読めるのではと思いました。ただエピソード自体が良くても、エピソードがケンカとかそういうことをさせるために出てくるというところがあるので、そういうところは課題かなと思いますが」
宮下先生
「エピソード一つ一つは面白いんだけど、今の作品はまだプロットの段階かなと思いました。いろんな要素を盛り込みすぎていて、逆に薄まっている印象です。もっとここから肉付けして、キャラにももっと深みを持たせてほしいなと思います。いまは平面的な感じ。それぞれの人物の家庭環境など背景をきちんと描くと、その子の輪郭がはっきりして光が当たり、それにともない影の部分も出来て、結果、立体的になるのではと思います」
編集E
「主人公がやや弱気で、でもなぜかモテてしまうという、少女漫画の王道のキャラクターの設定ですね。全体的に感極まって泣く、というシーンが多くて、たしかに読み手もそれで気持ちが高まるのは事実なんですが、それで解決しているところが多いのが全体としては気になりました」
編集D
「主人公のまわりにいるキャラの活かし方にもちょっと難ありかなと。小学校時代から一緒の友達と急に仲たがいをするところがありますが、これも展開のための設定として用意されている気がして、物語の自然な流れとして読めませんでした。キャラを活かしながら物語を動かすことを、もう一回考えてみてほしいと思いました。」
編集A
「文章は一番読みやすかったと思いましたが、80年代の少女漫画みたいな感じがして、あんまり今をとらえてないなと思いました。寮のような設定を入れていくなら、いっそのこと狭い箱の中で、人間をえぐっていくような子どもの残酷さなんかも書いても面白いんじゃないかなと思います」
編集C
「キャラがうすいのもそうですが、男の子もあんまりイケメンな感じがしなくて、恋したい、という感じにならなかったのも今後の課題だと思いました」
宮下先生
「あと、気になったところは、章立てをしてほしいことです」
編集B
「実は、応募段階で章立てされている作品は、みらい文庫大賞が始まった頃にはむしろ少なかったんです。少しずつ増えてきて、最近はおおむね章立てされている応募作がほとんど、という印象です。児童向けの作品は、章を立てて区切り良く読ませていくのがよいと応募者の中で浸透してきたのはいいことだと思っています。作品によって例外はあるかもしれませんが…。この作品についてはあとひとつ、タイトルがひどい(笑)。中の要素を並べただけという…ただそのわりに読み心地がよく読了後の好感度は私は高かったです」

『実はいっしょに住んでます』

タイトルから期待される展開が、別方向にブレてしまったのが残念。

宮下先生
「冒頭すぐにお話に入るところは良いですし、キュンとする場面の見せ方は上手いなと思いました。一番気になったのは、思春期の子どもを持つ親が再婚するというのに、あまりにもデリカシーがないところ。そこにリアリティーを感じられませんでした」
編集A
「たしかに、親の片方が欠けるという大きな喪失感を描かなくて、なにがキャラなのかと疑問ですね。例えば、さみしさを抱えた渚くんと女の子のさみしさとさみしさの邂逅の方がドラマになるし、そこに触れずにご都合的に進んでいくのが、小説としてはかなり致命的なのではと思います」
宮下先生
「距離が縮まっていく感じが同居物で読者が読みたいところだと思うのだけど、そこが弱いかなと感じます。読後感がすっきりしなくて、せっかくいい要素がたくさんあるのにもったいないなと思いました」
編集H
「タイトルがとてもいいのに、同居の設定を生かしきれていないですよね」
編集D
「文章力は抜きんでていて、いいリズムで読めはしたんですけど、読んでみたら、ドキドキの恋物語じゃないことに面食らってしまいました(笑)」
編集B
「そう、タイプの違うイケメン二人と一緒に住むことになった、どうしよう!でも嬉しい!という展開が期待されるタイトルですよね(笑)。その設定を主軸において物語を構築すればよかったのではと思うのですが、どうして漫画を描くという要素がメインになってしまったのか疑問で」
編集G
「主人公が漫画を描いていて、創作の大変さを感じさせる山が多すぎるのも気になりました。恋愛ものということであれば、漫画でそんなに山を作らなくてもいいのかなと思います」
編集E
「漫画を描くという設定は、プロットだったり、下絵だったりと実は何工程もあるので、そのあたりを読者に把握させやすくするのも課題かなと思いました。この話で一番面白いところは同居ならではの、一緒に住んでいてドキドキするところなわけで、そこがもっと丁寧に書けるといいのかなと」
編集F
「キラキラ男子との同居は、すごくドキドキする設定なので、アリだと思いますが、そのわりには出てくる男の子が今一つ魅力的ではないかなという感じがしました。主人公のキャラもよくつかめなかったです」
宮下先生
「主人公が恋する渚くんの話がけっこうひどくて、あまり好きになれないキャラクターなんですよね。恋するお話っていうのは、主人公と同じように読者にもその男の子に恋してほしいと思います」
編集C
「確かに気になる所はあるんだけど、私はすごく面白かったです。例えば自分が同学年のイケメンの男の子と一緒に住むことになったらどうなるだろうという楽しさはすごく書かれている気がして、そこはいいなと思いました。漫画は二人が近づくためのツールでしかないのかなと思うし、男の子との距離感が少しずつ縮まっていくところをメインに修正すればよい作品になるのではないかと期待します」

第三次選考を通過いたしましたのは、以下の3作品です。

※敬称略、順不同
タイトル 氏名(ペンネーム)
部活は恋色、変奏曲(パルティータ) 遠井 玲音
中学☆デビュー
~はじめての寮生活、そして恋~
本山 聖子
実はいっしょに住んでます 夜野 せせり


第二次選考を通過いたしましたのは、以下の7作品です。

※敬称略、順不同
タイトル 氏名(ペンネーム)
監督は幽霊 嘉瀬 陽介
お笑いショータイム モフモフ
ステラ☆セレブ学校に留学しました! 一恋 ちえ
氷の国のアリス 汐野 葉
部活は恋色、変奏曲(パルティータ) 遠井 玲音
中学☆デビュー
~はじめての寮生活、そして恋~
本山 聖子
実はいっしょに住んでます 夜野 せせり


第一次選考を通過いたしましたのは、以下の18作品です。

※敬称略、順不同
タイトル 氏名(ペンネーム)
僕らのスゴすぎ・スキル 志音 ミサ
初恋相手は宇宙人?! 北山 千尋
監督は幽霊 嘉瀬 陽介
アイアム・ニンジャ
その少女、異国のものなり
荒居 あけみ
お笑いショータイム モフモフ
星屑テアートル 月野 花冠
パパがライオンだった頃 長谷川 デイジー
ステラ☆セレブ学校に留学しました! 一恋 ちえ
氷の国のアリス 汐野 葉
部活は恋色、変奏曲(パルティータ) 遠井 玲音
天使のピストル♥ 村山 むら
亀の井小学校 科学クラブ
気球大作戦
よもぎ 葉虫
『フツーの中学生で良かったのに、とある事情で心霊事件に首を突っ込んだ!
でも、一部の大人も私欲で動いてます!!』
泉 あおり
オー・ノー! 物語 明日 拓人
中学☆デビュー
~はじめての寮生活、そして恋~
本山 聖子
レッツ☆チアーズ 新井 爽月
午後五時の額縁にご注意! 内村 佳保
実はいっしょに住んでます 夜野 せせり