厳正なる選考の結果、以下の二作品が受賞作に選ばれました。
大賞『新古事記伝』
三月(さんがつ)26歳 京都府在住
【受賞コメント】
立派な賞をいただけて、とてもうれしく思っております。選考いただきました先生方、編集部の皆様、本当にありがとうございました。これで支払いの滞っていた国民年金を完済することができます。これからもがんばりますので、よろしくお願いいたします。
【あらすじ】
小5の女子カナメは『八百万名簿』という奇妙な名簿を見つけてしまう。本物とも知らず「大国主神」という神様を気晴らしに「呼び出し」たカナメの元に、翌日、変な男がやってきた……!?
優秀賞『クレイジードールと満月の夜』
相川 真(あいかわ・しん)25歳 山形県在住
【受賞コメント】
小さいころにやりたかったこと、欲しかったもの、こんなふうだったら面白いのにと思っていたたくさんのことを放り込んでまとめたら、こうなりました。自分のやってきたことが結果につながったのは本当にうれしいです。これからも楽しいものを発信し続けていきたいと思います。
【あらすじ】
平凡な女の子のさやは、ある日、魔女の人形(ウィッチドール)の使い手だと言われる。自由で勝手な人形のクレイジーにうんざりしていると、同じく人形使いだという美少年ウィルと、美少女青葉が現れて……!?
5月吉日、都内の会場にて選考会が行われました。
三次選考を通過した3作品についての2時間に及ぶ議論の末、大賞1作、優秀賞1作、計2作の受賞が決定いたしました。
以下、先生方にいただいた選評です。(50音順)
あさのあつこ先生
『“粒揃い”という印象』
今回、最終候補作三篇、どれも読み応えがありました。しかも、それぞれに個性が あって大いに楽しませていただきました。一読して、『粒揃い』という印象を強く受けたものです。一読した時点で、わたしが最も印象深かった作品は『クレイジードールと満月の夜』でした。ともかく、おもしろい。魔女の作ったドールたちの不気味な姿にまずは引き込まれて、夢中で読み耽りました。ドールたちをきっちり書きわけられる筆力もあり、第二回みらい文庫大賞はこれだなと確信したほどです。しかし、二度、三度読み返すと、気になる部分が見えてきました。まずは、ドールに比べ生身の少年少女たちが、くっきりと立ち上がってこないこと。特に、主人公である、さやの人物像がやや薄く、類型的にも感じました。ウィルにしろ青葉にしろ、いまひとつわかりづらいと言うか、わかるように書き込まれていない気がしたのです。さやがアニードールを解き放つ場面など、ぞくぞくするほどかっこいいのに、そこに至るまでに、きちんとさやを書いてないのが惜しまれます。とあれ、才能のある書き手の出現に心がざわめいたのは事実です。『魔法の国の非行少女たち』は、前半、とてもおもしろかったです。それぞれの呪文も愉快で、人間的には良いことが魔女には赦されないほどの悪行となるなんて設定がすてきで、楽しくてわくわくしました。でも、後半、そのおもしろさが萎んでしまったようです。物語を無理にまとめようとしたのでしょうか。せっかくの素材を生かし切れなかったかと残念でした。『新古事記伝』は、スケールの大きな実に読ませる作品でした。カタカナの飛び交う作品群のなかにあって漢字の羅列はかえって新鮮に感じるものですね。八百万の神に対する造詣と愛がひしひしつたわってきて、ほんとうにおもしろかったです。最後に八百万の神たちが押し寄せる場面も圧巻で、このダイナミックさは大賞にふさわしいと納得できました。ただ、展開がやや類型的でカナメの個性が薄い気がします。せっかくのミステリー仕立てなのですから、そのおもしろさを生かす工夫とカナメという少女をもっと膨らませる努力をぜひ。
石崎洋司先生
『もっと強く、もっと速く!』
今年の選考は、楽しむことができました。最終選考に残った三作品は、去年に比べて、明らかにレベルがあがっていましたし、特に「物語設定」と「キャラクター造形」は、それぞれに特徴があり、なにより、よく考えられていました。なかでも『クレイジードールと満月の夜』のキャラ設定は、群を抜いていたと思います。『デス・ノート』と『ローゼンメイデン』を合わせたような物語世界で、『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』のような人形が戦うわけですが、人形の口をぬいあわせていた糸を、しゅっと抜くや、戦いが始まるところなど、アマチュア作品とは思えない鮮烈なイメージで、しびれました。ただ『新古事記伝』と『魔法の国の非行少女たち』もあわせて、児童文庫ならではの「速くて強い物語」には、ほど遠かったと言わざるを得ません。 キャラや物語世界が、強く、独特であるほど、「説明」もより多く必要になりますが、説明すればするほど、物語は「遅く」なります。そして「遅い」物語は「弱い」のです。 ライトノベルでは(いい意味での)観念的なナレーションも歓迎されることがありますが、児童文庫では「目に見えるようにわかる」ことが重視されます。でも同時に、強いプロットが高速で展開されなければならない。この矛盾する条件をクリアできてこそ、小学生読者に次のページをめくらせることができます。そのために、物語りながら説明したり、ガツンと物語をオープンさせておいてから、すかさず説明したりと、いろいろ工夫をするわけですが、そうした「工夫への意志」が、三作品からは感じられませんでした。 とはいえ、今回の三作品の作者は、みな有望でしょう。新人賞ですから、順位付けはしましたが、小学生読者に支持される可能性は、ほぼ横一線だと思いますし、純粋な(なにが純粋かはさておき)児童文学の新人賞での応募作品より、ずっと「小学生読者オリエンテッド」な作品でしたから。そういう意味でも、来年の応募作品を読むのが、いまから楽しみです。みなさん、ふるってご応募くださいね!
中村 航先生
『旗を高くかかげよう』
最終選考に残った三作(をプリントアウトしたもの)を、わくわくしながら手に取った。選考という立場で読むわけだけれど、新 しい才能に出会えるのかもしれないと期待も膨らむし、緊張さえする。さあ、どれから読もうか、というところで、残念ながら期待は一旦、急速にしぼむ。お、 と期待させるようなタイトルや、何か気になるタイトルや、読んでみたいな、と思わせるタイトルが一つもないのだ。小説でも映画でも漫画でも絵でも曲でもタイトルというものは必ずあって、それは作品の看板であり旗であり一番短い説明でもある。作品を、あいうえお順に並べるために、タイトルがあるわけではない。応募者はペンネームを考えるヒマがあるなら、もう少しタイトルを練ったほうがいい。などと思いながら読み始めたのだが、この三作、それぞれとても面白かった。選考する立場を忘れて物語に引きこまれ、三作品とも後半で落涙することになった。「新古事記伝」はタイトルはよくないのだが、大きな世界観を描こうという野心に溢れた作品だ。キャラクターもよく描けていて感情移入しやすく、後半のたたみかけも見事だった。文章力、構成力の点で、やや最優秀賞とするには弱いのかな、と思ったが、選考会の議論で納得した。描きたいテーマがよく掘り下げられているし、視覚的な面白さもある、魅力に溢れた小説だった。「クレイジードールと満月の夜」はタイトルはよくないのだが、最後まで一気に読まされた。文章力は候補作でも随一であり、作者の力量はとても高い。女子同士の感情の削りあいなどにリアリティがあり、成長小説としての質が高かった。作者の今後に、多いに期待したい。「魔法の国の非行魔女たち」はタイトルはよくないのだが、可愛らしくて、エンターティメント性あふれる佳品だった。そのとき○○、少しも慌てず、などという呪文の言葉 は、きっと読者にも愛されるだろう。キャラクターの書き分けを含め、設定をもう少し練り直すと、受賞に相応しい作品になると思う。
深沢美潮先生
『チャレンジ精神に脱帽です!』
今年から最終選考に参加させていただいた深沢です。とても楽しみにしていましたが、期待に反しない力作ばかりでしたね!では文字数に限りがありますので、僭越ながら簡単に感想を。「新古事記伝」文句なく、わたしの一押し作品でしたので、受賞が決まって本当にうれしかったです。とても映像的な作品だと思いますし、日本古来の八百万の神様 という素晴らしいキャラクターたちを生き生きと描いてらっしゃいます。固有名詞などがむずかしいのですが、よくぞ挑戦されたなぁ! と、そのチャレンジ精 神に好感を持ちました。今後とも、ぜひ毎回チャレンジしていってくださいね! おめでとうございました。「クレイジードールと満月の夜」ライトノベルな雰囲気がする作品で、今後の活動がどのようになっていくのか興味ありますね。設定は素晴らしく魅 力的で映像的なのですが、世界観やキャラクターのリアリティの踏み込みが今一歩でした。また、ストーリーの盛り上がりも少なく、まるでシリーズの1作目 か、前後編の前編を読んでいるようでした。練り直しを期待します。「魔法の国の非行少女たち」題名からして、なんだろう?と興味を ひかれる作品です。ロンドンぽいテイストも好きなんですが、キャラクター小説であるにも関わらず、最後まで主人公がだれなのか、魔女さんたちの個性が伝わ らなかったのが残念です。呪文はすごくかわいいですね!! 意表をつかれました。最終選考に残った三作品とも、熱意があり、力もある方々だと思います。これからも魅力的な物語を紡いでいってください!
第2回みらい文庫大賞の受賞者が決定いたしました。
第1回に続き、大賞、優秀賞、それぞれ1作品ずつの選出です。
最終選考会では、審査員の先生方より揃って、「昨年以上にレベルが高く、純粋に作品として楽しみながら読めた」との感想をいただき、どの作品が受賞してもおかしくない状況で、大いに盛り上がりました。
受賞作は今秋以降に順次、出版予定ですので、ご期待ください。
「みらい文庫大賞」を通し、未知の才能に出会えることは、編集部にとっても大きな喜びです。今後とも、多くのご応募をお待ちしています。
※選考についてのお問い合わせには一切お答えできませんので、なにとぞご了承ください。
6月吉日、都内の会場にて、選考委員の石崎先生、中村先生もご参加いただき、なごやかな雰囲気の中で授賞式が行われました。
直接、選考委員の先生方のお話がうかがえる貴重な機会に、受賞者のお二人も感激してらっしゃいました!!
受賞者の三月さん、相川さん、おめでとうございます!
★第三次選考を通過されましたのは、以下の3作品です。
※敬称略、順不同
タイトル | 氏名(ペンネーム) |
---|---|
魔法の国の非行少女たち | 紺野 りり |
クレイジードールと満月の夜 | 相川 真 |
新古事記伝 | 三月 |
★第二次選考を通過されましたのは、以下の14作品です。
※敬称略、順不同
タイトル | 氏名(ペンネーム) |
---|---|
出動! おそうじ戦隊エコレンジャー | 波多野たき |
ブレイン・ガールズ | 滝井 幸代 |
ミダス王の末裔 | 天野 奈緒 |
山出し姫はプリンセスになれるのか | 高森美由紀 |
戦国魔法少女 | 秋元 晴巳 |
銀河の町の出来事 | 梅本 晃 |
魔法の国の非行少女たち | 紺野 りり |
クレイジードールと満月の夜 | 相川 真 |
JUMP!! | 佐藤 恵 |
四重奏カルテット〈G〉 | 桜井 楽茶 |
マジカル☆あみだ! | 月島 晴海 |
新古事記伝 | 三月 |
ぐるぐるトイレタイムマシン | 横尾 よしこ |
ミスクラ!~旧校舎の六不思議~ | 直井 倖之進 |
★第一次選考を通過されましたのは、以下の41作品です。
※敬称略、順不同
タイトル | 氏名(ペンネーム) |
---|---|
文句たれの王様フレーズマンキング | オゾンワン |
出動! おそうじ戦隊エコレンジャー | 波多野たき |
学校医・今日子の恋愛テク | 森明日香 |
ブレイン・ガールズ | 滝井 幸代 |
ミダス王の末裔 | 天野 奈緒 |
山出し姫はプリンセスになれるのか | 高森美由紀 |
海峡 | 若本 恵二 |
戦国魔法少女 | 秋元 晴巳 |
初めてのデートは不気味な洋館で | ひろみ透夏 |
魔法の贈り物 | 佐藤 あまい |
五年三組探検隊 ゾンビの里を行く | 山中 浩史 |
銀河の町の出来事 | 梅本 晃 |
魔仙術学園のユーナ | 竹宮 芹 |
魔法の国の非行少女たち | 紺野 りり |
まじない姫 夕希 | 真風 月花 |
ハイスクールは虹の色 | アスカ エム |
クレイジードールと満月の夜 | 相川 真 |
ヤミクイの巫女と少年ギグ | 稲葉 泰子 |
JUMP!! | 佐藤 恵 |
ライバルよりも速く走るためのたった一つの方法 | 杉田 純一 |
さくらひめ七変化! | 秋元 晴巳 |
四重奏カルテット〈G〉 | 桜井 楽茶 |
マジカル☆あみだ! | 月島 晴海 |
純情リアル ~ふわふわぴんく~ | KAKA。 |
トイレのアクアリウム | 岩村 瑞華 |
ランプライト | さとうれいこ |
ずっと会いたかった | 朝井 晴日 |
ぼくとわたしとおならさまと | 五十嵐 まり |
リアル・ハーツ戦記 | 氷月 あや |
花妖武伝 | 森野 乃笑留 |
サムライロード | 丸矢 光 |
少年王と時空の扉 | みっち~6画 |
新古事記伝 | 三月 |
友だちはツタンカーメン | 森くま堂 |
ぐるぐるトイレタイムマシン | 横尾 よしこ |
トップスピンで打て | さくらのみちを |
ミスクラ!~旧校舎の六不思議~ | 直井 倖之進 |
それから物語 | 上野与志 |
町おこし引け受け隊 | 大山 京平 |
ガトリング・ガール | 秋元 晴巳 |
彩界の秘密 | 浅見 史子 |